今回の活動は、汐留のアド・ミュージアム東京で開かれていたTCC広告賞展2015に行ってきました。
今年の広告賞グランプリは「自分より強いヤツを倒せ。」というものでした。
TCC広告賞展とは、東京コピーライターズクラブというコピーライターやCMプランナーの団体が開いているもので、1年に1度開催する『コピー審査会』で選出・表彰された広告の展覧会です。広告代理店の代理店による代理店のための催しという面はあるかと思います。
”コピーのポエム化”ということが叫ばれて久しいですが、今回はどうだったでしょうか。
冒頭のグランプリ「自分より強いヤツを倒せ。」はペプシネックス ゼロの桃太郎CMのフレーズなのですが、果たして、コピーでしょうか"いわゆるポエム"でしょうか。
もちろん、どう感じるかは受け手によってそれぞれ違うかと思いますが、個人的には"ポエム"寄りかと思います。
"ポエム"と呼ばれてしまうコピーを考えると、下記の2つの条件を満たした場合に"ポエム"扱いをされることが多いようです。
1、コピーが商品・サービスの特徴や性質等に言及していない
2、コピーが商品・サービスと紐付けられ広く認知されていない
1はコピー自体の設計についての話であり事前にコントロールできるもの、2はコピーを含むプロモーション全体の話であり結果論的なものだといえます。
では、なぜ2つの条件を満たした”コピーのポエム化”が増えたのでしょう。
まず1については、商品・サービスのコモディティ化が進んでしまった現代においては、特徴や性質を明確に打ち出すことが難しくなり、結果として雰囲気やイメージだけで表現せざるを得ないという状況がありそうです。また、嗜好の多様化が進んだことに対し、なるべく広い嗜好に対応して共通項で括ろうとした結果、とがった表現を避けて無難な表現に落ち着いてしまうという傾向もあるかもしれません。
2に関しても、大量の情報を受け取る時代になり、個人の中で一つ一つの広告の濃度が薄まったため、広告と商品に対する認知を持ちにくくなってきたのではないでしょうか。一方でネットを中心にパーソナライズされた広告やコンテンツが発達しましたが、マスメディア時代に比べて、皆が一様に知っている広告・商品というような社会的流行が生まれづらくなったと考えられます。
"ポエム化”という単語には、"曖昧で独りよがりな言葉"という否定的なニュアンスが大きいと思います。しかし、そのポエム化が、実は、コモディティ化・嗜好の多様化・情報過多といった、時代のニーズに応えるための配慮の結果なのかもしれません。ニーズに応えようとすればするほど曖昧で独りよがりと批判される、そんな逆説的な事態が”コピーのポエム化”にはあるのかもしれません。
なんだか一夜漬けのレポート課題みたいになってしまいました。
そういえばここは手藝部のブログでした。
翻って手芸について考えてみると、手芸というものはまさにポエムそのもののように思います。
曖昧で独りよがりこそ、まさに手芸の真骨頂ではないでしょうか。
アートほど非実用的ではなく、デザインほど商業的でなく、民藝ほどには無心にならず、アーツアンドクラフツほどにはこだわらない。ないないづくしで、まるで否定神学のようですが、手芸とはそんな「ない」の狭間から生まれてくるものなのかもしれません。
今回はそんなポエムをお送りしました。
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