先日、アイリスオーヤマのサーキュレーターの各機種について詳しく解説しました。
今回は、特定の機種やメーカーに関係なく一般的なサーキュレータの使い方と選び方について整理してみたいと思います。
そもそもサーキュレーターとは
サーキュレーターとは英語のサーキュレーション(Circulation:循環)からきており、「Circulator:循環させるもの」という意味の言葉です。
正式には「Air Circulator」なので、日本語で翻訳するなら「空気循環器」といったところ。
その名前の通り、サーキュレーターは部屋の空気を循環させるもので、強い風を送って空気をかき混ぜることで、部屋の温度を均一にするなどの効果があるアイテムです。
サーキュレーターのメリット
サーキュレータは、冷房や暖房と併用することで、冷暖房機による温度のムラを減らします。
つまり、夏の冷房が足だけ寒いとか、冬に暖房が頭だけ暑いといった状態を解消し、部屋の快適さを向上させることができます。
さらに効率的に部屋全体に温度を拡散することで、冷暖房の設定を抑えることができるので、電気代の節約にもなるというメリットがあります。
扇風機とサーキュレーターの違い
扇風機とサーキュレーターは使用目的が異なります。扇風機は体に直接風を当てて涼むためのもので、サーキュレーターは部屋の空気を循環させるのがメインの用途となります。
もちろん扇風機を空気循環につかうこともできるし、反対にサーキュレーターを直接体に当てて涼むこともできますが、風の性質が異なります。
扇風機は体に風を当てる装置なので、サーキュレーターに比べて穏やかな風を面で起こします。
一方サーキュレーターのほうは、遠くまで飛ぶ直線的な風を起こすために面積が小さくて風圧が高い風という性質を持っています。
また、扇風機は、直接体に当てるという使用方法のため、夏のみ使うのが一般的ですが、サーキュレーターは、空気を循環させるという目的なので夏だけでなく、冬には暖房と併用、春や秋には外気の取り入れに活用するなど、1年中使える電化製品だといえます。
構造的な違いでは、サーキュレーターは、天井に向けて風を送れるようになっています。機種にもよりますが、約90度(真上)程度まで上に向けることが可能です。
逆に、高さが低い(扇風機のように首の部分が無い)ので、下向きに向けられるようにはなっていないことが多いです。(下向きにできる機種もあります。)
最近はサーキュレーターと扇風機どちらにも使えると謳うハイブリット機種も登場してきています。
どっちつかずという面もありますが、置き場所や掃除の手間などを考えるとこのような商品を使うのもありだと思います。
サーキュレーターの使い方
サーキュレーターの基本的な使い方は3つあります。
- 冷暖房などの部屋の温度のムラをなくす(循環・攪拌)
- 部屋の空気を外に出す、外の空気を部屋に入れる(換気)
- 直接風を当てる(直風)
冷暖房などの部屋の温度のムラをなくす(循環・攪拌)
天気予報などでよく聞く話ですが、暖かい空気は上昇、冷たい空気は下降するという物理的性質を持っています。
サーキュレーターが部屋の空気を循環させることで、上方の暖かい空気と下方の冷たい空気をかき混ぜて、温度差を解消し体感的に快適にすることができます。
冷房と暖房それぞれの使い方を解説します。
夏は冷房の効果をアップ
夏は冷房(エアコン)からでてくる冷気が部屋の下に溜まります。冷房をつけると頭は暑いのに足元だけが寒いというのは冷気が下にだけ溜まった状態です。
こういった状態を解消するのにサーキュレーターは最適です。
一般的な設置方法としては、エアコンを背にエアコンの下に配置する方法が推奨されています。床の空気を循環させることで温度が均一化されやすくなります。
部屋の構造や、エアコンの送風方法などによって異なるので、設置場所や角度を変えるなどして試してみるのが良いと思います。
冬は暖房と併用で快適に
冬に暖房機器を使う時には、夏とは逆に暖気が部屋の天井部に溜まります。
こういった場合には、エアコンの向かい側から暖かい空気が貯まっている天井に風を送ることで暖かい空気を下に降ろすことができます。
ストーブやヒーターなどの場合でも下から上に暖気が上がるので、天井に風を送ることで部屋の温度を均一化することができます。
なお、石油ストーブやガスストーブなど、燃料を燃やすタイプの暖房器具の場合、直接火に風を当てると不完全燃焼などの事故が起こる可能性があるので注意してください。
こちらも部屋の構造や、暖房機器の違いなどによって効果的な置き方は異なるので、実際に試してみるのが一番です。
部屋の空気を外に出す、外の空気を部屋に入れる(換気)
感染予防の観点から換気の重要性が高まってきた昨今ですが、サーキュレーターは換気をするのにも非常に便利です。
サーキュレータを使って換気をする方法としては主に2つあります。
一つは、外側から室内に空気を入れる方法で、部屋の対角線上の窓やドアを開けて、サーキュレーターを室内側に向けて設置します。外から新鮮な空気が取り込まれて、反対側の窓やドアから元の空気が押し出されていきます。
もう一つの方法としては、部屋の空気を外に押し出すのに使う方法があります。窓やドアを開けて排出するように配置すると反対側から空気が取り込まれて換気をすることができます。
それぞれ窓や家具の配置によって効率的な方法が変わるので、試して使い分けてみましょう。
直接風を当てる(直風)
3つ目の使い方として、風を直接当てる使い方があります。直接風を当てる対象として、体に直接あてる場合と、物(主に洗濯物)に当てる場合があります。
体に風を当てて涼を取る
サーキュレーターは扇風機よりも強い風のことが多いので、直接体に当てるためには、弱モードや首振り・リズム機能が無いとしんどいと思います。
これらの機能が付いていれば扇風機のように直接風を体に当てて、涼むことができます。
洗濯物の部屋干しに使う
サーキュレーターを使って洗濯物に風を当てて乾燥を早めることができます。
とくに力を発揮するのが部屋干しのときです。
部屋干しの生乾きによる嫌な臭いは、乾燥に時間がかかりすぎることでの雑菌の繁殖が原因です。なので、風を当てて乾燥を早めることで生乾きを防止することができます。
サーキュレーターの選び方
ここまで基本的な使い方についてご紹介しました。
最近は沢山のメーカーから様々なサーキュレータが販売されていますが、どのように選んだらいいのでしょうか。
サーキュレーターを選ぶのには、価格は別として主に4つのポイントがあると考えます。
選び方のポイント1 風量の大きさ
あたりまえですが、風を起こすためにサーキュレータを導入するので風量が機種選びの基本要素となります。
メーカーによってまちまちですが、それぞれ対応畳数や到達距離が表示されているので目安にしましょう。
大抵の機種は風量が設定が可能ですが、表示されている対応畳数等は、最も強い風量で使用した場合を採用していることが多いです。
なお、日本ではサーキュレーターに関する統一された風量の基準がないため、メーカーの表示を信じるしかないのが現状です。(個人的には基準と表示を法律で義務づけるべきだと思います。)
消費電力に関しては、基本的には風量が大きいほうが消費電力が大きくなりますが、サーキュレーター自体そんなに電力を使わない製品なのであまり気にしないで良いと思います。
例えば、コンパクトなACモータの12畳程度のタイプの強モードで大体30W(1時間0.82円程度:1kWhあたりの電気代が27円として)です。仮に強モードで一日8時間30日フル稼働したとしても月約195円です。普通の缶ジュース2本よりも安いです。
ACモーターとDCモーターとは
先ほど「ACモーター」という単語が出てきましたが、サーキュレーターの販売ページなどには、よく「DCモーター」というのがアピールされていると思います。
サーキュレーターに使われているモーターは大きく分けて「ACモーター」と「DCモーター」の2種類があります。
ACモーターは本体価格が安価ですが、構造上、風量調節が2段階や3段階のみがほとんどです。一方のDCモーターは、モーターの仕組みが違うので、より細かく(超弱風から細かく)風量設定をすることが可能です。
また、宣伝文句には「DCモーターなので省エネ」と書いてあることがあります。
消費電力は確かに低く省エネなのですが、そもそもサーキュレーターの消費電力はかなり低いので、ACモーターと比べたときにそれほど差はつきません。
同一のサイズの機種でざっくり計算すると、一日8時間強モードで毎日使い続けたとしても、ACモーターとDCモーターで大体月100円程度の差となります(機種による)。
DCモーターの機種の価格は、ACモーター機種の2倍近くすることが多いので、消費電力という観点のみで考えるのであれば、元を取るのは難しいと思います(一日8時間強モードを4,5年使い続けてようやく元がとれるような感じ)。
DCモーターを選ぶ際は、超弱風の風量設定が必要かどうかが決め手だと個人的には考えます。
選び方のポイント2 音の静かさ
何時間もつけっぱなしで、なおかつ、そこそこ音のする電化製品なので、騒音は気にすべきポイントです。
ファンの騒音については、羽の形状やパーツの精度などさまざまな要因が複雑に絡んでくるので、スペックを見ただけでは分かりません。
一つの指標として、メーカーによっては、機種の説明にdb(デジベル)という音の大きさが表されています。
20dbで木の葉のふれあう音、30dbでささやき声程度と言われているので、静音性を重視する人はこの単位を確認しましょう。
基本的には風力が強いほうが音がうるさい傾向にあります。
また、本体のサイズが小さいほど(大きい風力を得るためには)羽を早く回転させる必要があるため、風切り音が高音になり、耳につきやすくなります。
つまり同じ風力であれば本体サイズが大きいほうが音が静か(低音で気になりにくい)になりやすいといえます。
見逃されがちですが、設置場所が近ければうるさく感じるし、遠ければ騒音は聞こえにくいです。
使い方の部分でご紹介した通り、自由に設置できるのがサーキュレーターの強みです。普段生活しているところから離れた場所に置いてみるのも騒音対策になります。
「うるさいサーキュレーターだけど、離して設置すれば全然気にならなかった。」なんてことも十分にあります。
DCモーターは静かなのか
騒音に関しても「DCモーターなので静か」という表現が大手メディアやブログなどで見られますが、これはミスリードだと思います。
あくまで音の静かさは、羽の形状やパーツの精度など全体の設計からくるもの。DCモータでも音のうるさいサーキュレーターは存在しえます。
選び方のポイント3 付加機能
風を送るという基本機能に加えて、いろいろな付加機能がついています。消費者のニーズに応えるべく各メーカーが工夫を凝らしているところでもあります。
主な機能として次のようなものがあり、使い方次第なので、購入の際には使用場面をシミュレーションして必要な機能を選びましょう。
首振り機能
縦方向、横方向に首振りが自動でできるのか、手動なのか、手動でもできないのかなどがあります。また、首振り範囲の段階(45°,60°,90°の三段階など)を設定できるものもあります。配置する場所などに合わせて選びたい機能です。
首振りがあればより優れているのかというと、そういうわけではありません。首振り機能をつけるためには、ギアを付け加えるなどする必要があり、パワーロスや重量の増加にもつながります。
例えば、ボルネード(世界で初めてサーキュレーターを開発したとされる米国の大手サーキュレーターメーカー)製品は基本的には首振り機能はついていません。パワーのある直線的な風で空気を循環させるのが一番効率の良い方法という思想で設計されているためです。
タイマー
タイマーによる自動OFFや自動ONなどを搭載している機能があります。上記で説明した洗濯物への使い方や就寝後に自動で電源を落としたい場合にはタイマー機能が便利です。
またアナログ式スイッチのサーキュレーターだと、下記のようなコンセントタイマー(電源タイマー)と組み合わせることで、指定時間にON,OFFなどより柔軟な運用が可能になります。
リモコン
離れた場所に設置する場合、いちいちサーキュレーターの場所に行ってスイッチ操作をするのは面倒です。また、棚の上に設置するというような使い方も考えられます。このような使い方をする場合はリモコンがあったほうが便利です。
最近は、音声認識に対応しているサーキュレーターも登場してきています。今後はGoogle Home、Amazon Echoなどのスマートスピーカー連携のサーキューレーターが増えると思います。
選び方のポイント4 デザイン
メンテナンス(掃除)のしやすさ
扇風機同様、サーキュレーターは常に風を吸い込んでいるのでホコリが付着しやすく、定期的な掃除が必要となります。
そのためカバーや羽根が簡単に取り外せるか、どの部品まで取り外せるかは意外と重要な要素です。
ドウシシャの「ピエリア サーキレイター」はバックパネルまで全部取り外しして掃除することが可能で、常にぴかぴかにしておきたい人や、掃除が苦手な人はこういった商品を選ぶのも手です。
見た目
基本的には夏にしか使わない扇風機に比べて、サーキュレーターは夏も冬も使用可能なため、出しっぱなしにすることが多く、見た目は重要な要素です。
かつてはサーキュレーターと言えば、業務用のような無骨の見た目の物ばかりでしたが、最近は家庭のインテリアとして見た目のデザインに力を入れたものが増えています。
例えば下記のボルネードのサーキュレーターはアンティーク風のクラシックなデザインが特徴です。
サーキュレーターの使い方と選び方まとめ
ここまで、サーキュレーターの使い方と選び方についてご紹介しました。
サーキュレーターは、扇風機に比べて使い方の応用範囲が広く、各家の環境(家の構造や建具・家具)によって使用方法がかなり異なってくる商品だと思います。
どのような使い方をして、どの機能が必要なのかの検討に、この記事を参考にしていただければ幸いです。
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